がくうそうでんせん

架空送電線の話

The Overhead Power Transmission Line
タワーラインソリューション
produced by
Tower Line Solution Co.,Ltd.

最近のトピックス

最近のトピックス(No.46~55)を下記に掲載する。

No.55 経済産業省が送電鉄塔の耐力調査It will be the plan that Ministry of Economy, Trade and Industry carries out the proof stress investigation into transmission steel tower in September.

我々の生活に欠かせない重要なインフラの一つである架空送電線設備については、台風、着氷雪など過酷な自然現象に耐えるように設計施工されて全国で約24万基の鉄塔が運用されている。
これら鉄塔については、経年劣化を含め設計時の耐力が保たれている否か、設備所有者の各電力会社が常時管理して適切に維持運用しており、また、各社に共通する規模の大きな調査研究事項等については電力中央研究所が行っている。

しかし、今回、電気新聞8月12日トップ記事に掲載されたように、南海トラフ地震のような従来考えられなかった過酷な自然災害が想定されること、および昭和30年代以降の高度成長期に建設された基幹系統設備が次第に経年化しているため、国・経済産業省が直接送電鉄塔の耐力を確認する現地調査を行うことにした。
経済産業省が自然災害の過酷化と設備経年化に着目して電力会社の設備を直接現地調査をするのは初めてのことである。

現地調査の具体的なことは不明であるが、全国10箇所程度の地点を選定し耐力調査を9月にも行い、大規模災害時に電力供給システムが機能を維持できることを 確認する狙いで、年度内にも経済産業省の電力安全小委員会に報告し、今後の必要な対策に反映させていくものと思われる。

なお、東日本大震災では、津波により倒壊した鉄塔は多数あるが、直接地震波により倒壊した鉄塔は無く、東京電力福島第一原子力発電所構内で盛り土の崩壊で倒壊した鉄塔が1基あった。

No.54 日刊工業新聞に当HP記事掲載The introductory article on the homepage that I established was carried by The Nikkan Kogyo Shimbun (The Business & Technology Daily News) dated June 4.

公益社団法人日本技術士会では、平成21(2009)年10月から、技術士と同会の知名度向上を目的として、日刊工業新聞に「課題に挑む-技術士のソリューション-」の標題で連載企画を続けている。
この広報活動は、日本技術士会が「社会に向けた情報発信の強化」を事業課題の大きな柱として位置付けている中で大変重要な活動である。
この連載企画は、毎週火曜日に掲載されており、今年6月末には160回になろうとしている。

当ホームページ(HP)開設者としては、架空送電線について技術士として解説を行っていることから、HPの開設および運営活動が上記趣旨に合致するので、この企画に応募した。
その結果、この度掲載に選ばれ、先般平成25(2013)年6月4日付けで掲載された。

このことは、日本技術士会および日刊工業新聞社が当HPに対する評価をしていただけた訳で、大変光栄に存じている次第です。
これを機に、今後、当HPをますます充実させるよう、更なる努力をしていく所存であります。

No.53 「複導体送電線の設計と工事」(雑誌連載記事)についてThe book which commented on a method to calculate the circuit constants of the power transmission line in detail was published in Japan in 1960.
For Japanese engineers, it is a particularly precious textbook.
I hope so that Japanese many engineers read the book.

架空送電線の線路定数(インダクタンス、キャパシタンス)およびコロナ発生電圧などの計算方法は、一般に発売されている「送電工学」、「電気工学ハンドブック」あるいは電験受験雑誌などで基本式が掲載されてそれぞれ解説されているが、実際に電力会社で運用されている特定の形状の送電線についての計算をしようと思うと、基本式だけではおそらく解けない。
例えば線路定数の計算では、電線配列により異なる3相の各線間距離計算方法あるいは複導体電線間での電流の不平衡計算など、計算に必要な具体的な計算式が上記に掲げた諸本には示されていない。
したがって、現場第一線で活躍する電力技術者、電験受験あるいは電力工学を専攻して勉強に励んでいる学生諸君、などの方々は実践的な良い教科書を探しておられるのではないだろうか。

この要望に応えられる本が実は存在する。

それは、今から50年以上も前に書かれた「複導体送電線の設計と工事」(雑誌連載記事)であり、今ではすっかり忘れ去られているが、技術者にとって誠に貴重で素晴らしい本である。(写真参照)
具体的には、1960年(昭和35年)に、京都の出版社・電力社で発行していた月刊雑誌「電力」の第44巻・第6号~翌年の第45巻・第11号にかけて、連載記事として東京電力の竹下英世氏が16回に亘って執筆されたものである。
そこでは複導体送電線(2~n導体)の線路定数計算方法、コロナ発生電圧計算方法などの他、設計、工事、保守に至る諸課題などが連載解説され、特に計算過程は詳細に懇切丁寧に解説されて、例題まで掲載されており、50年以上経った今でもこの本を超える解説本は無いであろう。

さて、この貴重な本の入手方法であるが、当時の雑誌発売元の「電力社」は現在存在しないのでバックナンバーを求めようにも求められない。
日本で最も多くの図書を所蔵している国会図書館では、閲覧できるもののマイクロフィルム化されていて、品質は極めて悪いもので字が擦れていたり、髪の毛が写っていたり、とてもコピーしたいと思うようなものではない。

そこでいろいろ手を尽くして探したところ、東京工業大学図書館(目黒区大岡山)に紙の本のままの状態で1冊だけ所蔵されていることが分かった。
この図書館は一般の方でも、健康保険証(免許証、住基登録証などは不可)を見せて身元を明らかにすれば入館可能で、コピーも申請して出来るので、ぜひ閲覧されることをお勧めする。
この度、もう閲覧不可能ではないかと思っていたこの本の閲覧先が分かったので、当トピックスに掲載したものである。
ぜひ、一人でも多くの技術者の方がこの本を読んで勉強に役立てていただきたいと思う次第である。

なお、下記の通り一部にミスプリントがあるので修正(一部の印刷文の入れ替え)してお使いいただきたい。

  • 第2回、P1246・左段組・上から4行目、「k'=」の式から「・・・(3.11)」まで13行分を切り取り、削除する。
  • 切り取った13行分を、前ページP1245の右段組・上から15行目「k=」の式と、次行の「となり単相の・・・」の間に挿入する。

No.52 送電線劣化対策に摩擦撹拌点接合(溶接技術)の適用Friction stir spot welding (FSSW) is applied to electrical transmission line parts to ensure the stable electricity supply.

送電線の経年劣化対策は、その部位(鉄塔材、がいし、電線と付属品など)と症状(機械的荷重による劣化、錆の発生など大気環境に暴露されることによる劣化、素材そのものの経年劣化、送電電流による発熱などによる劣化、等)に応じて各種の方策が考案・開発されており、設備の保全と安定供給が保たれている。
この度、経年劣化対策の一つとして、圧縮型引留クランプのジャンパソケット部分の導通劣化対策に摩擦撹拌点接合(FSSW:Friction Stir Spot Welding)と言う溶接技術を適用した対策工法が開発され、今年度溶接学会春季全国大会で発表されたので紹介する。

圧縮型引留クランプの劣化原因としては、圧縮施工不良に伴う機械的強度不足による電線の抜け、或いは発熱劣化などがあり、また、圧縮部分に水分を進入させないように充填剤を注入するがその施工不良で雨水が浸入し冬期に凍結した時の膨張現象でクランプが変形したり裂けたりする劣化現象が主に経験されている。
上記の劣化原因に比べ、クランプ本体にボルト締めされたジャンパソケット部分の経年劣化現象については現在のところ数少ないと思われる。
しかし、クランプ本体のアルミプレートとジャンパソケットの接触部分はボルト締めされて密着しているものの、長年のうちには雨水が浸透し接触面で酸化皮膜が成長して電気抵抗が増加し、発熱したり、場合によると溶損に至るケースもあろう。

現在稼働している送電線の多くは、昭和40年代以降の高度成長期に建設されたもので履歴が40年を超える送電線もあり、今後次第に経年劣化の症状を顕在化させる設備が増加する傾向にある。
したがって、現在までは希に発生する劣化現象でも早めに対策を確立して設備保全と安定供給に資することが求められよう。
電力会社が圧縮型引留クランプのジャンパソケット部分の異常を検知する方策としては、地上巡視時の赤外線熱検知機等による探知、或いは塔上検査による探知であるが、コストダウンを図りつつ効率よく正確に探知することは難しいのが実状である。
また、異常を発見した場合には、送電停止してジャンパソケット部分の接触面に発生した酸化皮膜を清掃作業で除去することになるが、そのようなケースが一部で出始めており、今後次第に多くなる傾向にあると思われる。

そこで、この度、圧縮型引留クランプのジャンパソケット部分にFSSW技術を適用する対策工法を開発したもので、本工法によれば半永久に導通状態を確保でき、頻繁な巡視・点検および酸化皮膜を除去する清掃作業等が回避できる優れた対策工法である。
これは、東北大学大学院工学研究科の佐藤裕准教授および粉川博之教授が、岩手大学工学部の中村満教授、古河電工パワーシステムズと共同で開発したものである。
このFSSW技術は、アルミニウム合金製自動車ボデーの製造に利用されている固相接合技術で、先端に突起のある円筒状の工具を回転させながら強い力で押し付けることで突起部を接合させる部材の接合部に貫入させ、これによって摩擦熱を発生させて部材を軟化させるとともに、工具の回転力によって接合部周辺を塑性流動させて混合させることで複数の部材を一体化させる接合法である。

現在、アーク溶接のように大型電源(商用電源)および設備が不用な工具を開発中で、火花や騒音を発生させない比較的コンパクトな装置を目指している。
やがては鉄塔上での施工が可能な技術である。

佐藤准教授と開発チームは、実際に酸化皮膜が発生しているACSR410m㎡用の圧縮型引留クランプを使用して実験を行った。

まず、クランプの写真におけるA点とB点間でFSSW施工前の電気抵抗を測定したところ、0.4μΩ/mmであった。
次に、写真のようにジャンパソケット部分に工業用純アルミの板を配置し、クランプ本体側プレートとジャンパソケット側にそれぞれ1点ずつFSSWを施工したところ、施工時間3秒で良好な金属接合に成功した。
FSSW施工後に同様に電気抵抗を測定したところ0.1μΩ/mmが得られ、電気抵抗は4分の1に低減することが分かった。
更に、ACSR410m㎡の定格電流である830Aを28時間にわたり連続して流したところ、室温が20℃の時、FSSW接合部は80℃以内に納まり、抵抗値の急激な変化や不安定な変動はみられなかった。
この実験を3体の供試体について行ったがいずれもほぼ同様のデータが得られた。

これらの実験から、圧縮型引留クランプのジャンパソケット部分に半永久的に導通状態が安定し劣化しないFSSWの適用が可能であることが分かり、本件は保守運用上のコストダウンに極めて有効な工法であると思われる。

ただ、この工法を採用しても極端に酸化皮膜層が厚く発生してクランプ本来の導通状態が異常に不良になったり、何らかの原因でジャンパソケット部の締め付けボルトが緩み接触面積が減少したりした場合などでは、FSSWプレートに集中的に送電電流が流れてそれが溶断するケースも考えられるが、発想の転換で保守巡視時にFSSWプレートを目視点検しそれが正常かどうかでジャンパソケット部の診断ができるため、FSSWプレートが健全か否かが異常発見の指標として活用できると思われる。

なお、保守運用上ジャンパソケットを着脱する必要が時々発生するが、その時はFSSWプレートをニッパー等の切断工具で切り、再取付時は再びFSSW施工することで対応できるとのことである。
今後、今年度中に古河電工パワーシステムズ社にて実用化に向けた工法・工具を開発する予定とのことであるが、コンパクトで安全に塔上作業が可能なシステムが開発されることを大いに期待したいと思う次第である。

No.51 UHV国際標準化活動が最終段階入りIEC(International Electrotechnical Commission) will finish work to decide the international standard of UHV electric power system aapparatuses soon.

2009年に国際電気標準会議(IEC)にて日本発の110万V(1100kV)が標準電圧として規格化(標準化)されて以来、我が国の電力関係者が一丸となって「オールジャパン体制」で推進してきたUHV送変電技術の国際標準化活動が最終段階に入り大詰めを迎えている。
既に当トピックスNo.23(2009.06.05)「日本発UHV・1100KV世界標準電圧に認定」で掲載した通り、我が国が開発した世界最先端技術であるUHV・1100KV送電電圧が2009年にIECで国際規格化(標準化)されているが、それをスタートラインとして関連するUHV送変電機器等の国際規格化に「オールジャパン体制」で取り組んでおり、その輝かしい成果としての規格化達成が目前に迫ってきた。
この経過を既報とやや重複するが整理してみたい。

我が国のUHV開発

我が国のUHV開発は、1973年に当時の中央電力協議会に「UHV開発推進委員会」が設置されて、将来必要となるUHV設備の調査・研究がスタートした。
その後東京電力が中心となり調査・研究を推進し、電力中央研究所での大規模諸試験結果に基づきUHV公称電圧を1000kV(100万V)と決定し、西群馬開閉所~東山梨変電所間約140kmにUHV設計西群馬幹線(現在500kV運転)を建設し1992年に送電線を完成させた。
現在ではその世界最先端技術で建設されたUHV設計送電線のこう長は約430kmにおよんでいる。

この成果については、東京電力および電力中央研究所が、中国の国家電網公司に対して「100万ボルト送電技術コンサルティング契約(2005年)」を結び、中国のUHV建設に当たり国際的協力をしているが、更に世界に広く発信して世界中で技術展開したいところである。
しかし、それには世界標準化させないとガラパゴス化してしまう懸念があり、電力関係者はその道筋を模索していた。

IECに於けるUHV標準電圧の国際規格化

一方、電気に関する国際規格を定めているIEC(国際電気標準会議)では80万Vを超える電圧階級では実体のある正式規格がない状況であった。
新しい規格化の検討については、下図のIEC組織の中でSB(セクターボード:技術諮問委員会)がSMB(標準管理評議会)に勧告する立場にあるが、UHVの件はSB1(送電および配電)が取り扱うこととなっており、その議長は2004年から日本の池田久利氏が就任していた。
そこで池田氏は2005年以降精力的に活動し、2006年2月にSMBに対してUHVの規格化を勧告したが、これを受けてSMBは2006年5月、「UHV市場ニーズと技術の成熟度確認」をSB1に対して要請することを決定した。

この問題を検討するには、送変電技術について技術的調査検討をしているCIGRE(国際大電力システム会議:Conference Internationale des Grands Reseaux Electriques )と協同して検討することが必要なことから、日本代表が2006年8月CIGRE総会で本件を報告し、IECとCIGREが共同でシンポジウムを北京で開催することを決定した。
このチャンスを逃さず、日本の主張を世界に認めてもらうには国内の体制を強化することが肝要なため、2006年11月電気学会電気規格調査会内にUHV国際標準化委員会を設け、国内が一元的且つ迅速に対応できる体制を整えた。
更に、この北京シンポジウムの開催に向けては、池田議長および関係者が2006年から2007年にかけて中国を始め欧米各国に対し精力的なロビー活動を展開し、いわゆる「仲間作り」活動を強力に推進した。

満を持して、池田議長は2007年7月にCIGREと共催して北京で大シンポジウムを盛大に開催して、日本の主張通り「UHV市場ニーズと技術の成熟度」を確認することができた。
同時にCIGREとの合同のUHV規格化検討グループ(JICCG:Joint IEC-CIGRE Coordination Group)の発足をSMBに勧告し、2012年までにUHVの規格化を行うことおよび標準電圧として1100kVの採用を勧告した。
この勧告に対し、2007年10月にSMBはJICCGの発足を承認しUHV規格化検討が大きく進むこととなった。
UHV規格化のキーポイントとなった北京シンポジウムは、前述のように池田議長および関係者が事前に中国を始め欧米各国に対して精力的なロビー活動を展開し、いわゆる「仲間作り」活動をした努力のお陰で成功裏に終えることが出来たと言えよう。
早速、水平規格となる標準電圧規格と試験電圧規格はそれぞれTC8およびTC28で改訂審議が開始され、それぞれ規格最終案が2009年5月22日と10月30日に承認された。
すなわち、標準電圧は日本発となる1100kVが、また、試験電圧は日本提案の低減された雷インパルス耐電圧値1950kV(変圧器用)と2250kV(GIS用)が規格化され国際標準化された。

この件については、NHK-TV 「国際標準化・きょうの世界(BS-1 2009.8.4)」および「追跡!A to Z:激突・国際標準戦争ニッポン生き残りの鍵逆転へ、巨大電力市場巡る秘策(地デジ 2009.8.8)」で放映されたのでご覧になった方も多いと思われる。

IECに於けるUHV機器規格化

続いてUHVの送変電全般に亘る規格化に当たっては上記の水平規格に引き続き機器(変圧器、開閉機器、避雷器など)の規格化が必要になるが、これらについても日本発の技術を反映させるために池田議長を中心にたゆまぬ努力が続けられた。
2007年11月のJCCIG第1回会議では、下図に示す2012年を目標にしたロードマップを日本委員が提案し、2008年4月のSB1とJICCG合同会議ではUHVACの機器規格化方針を決定し、IECとCIGREが一体となって規格化に向けた作業が進められた。
標準電圧と試験電圧の水平規格が2009年に決定したことを受けて、この時点をスタートとして下図の通り2012年を目標にして本格的に機器規格化の作業が行われた。
なお、その作業が順調に進捗したので、下図の通りJICCGは2010年9月に解散し、DC(直流)を含めたUHV戦略グループであるSG2(Strategic Group 2)に引き継がれて活動を続けている。

以上のように、池田議長をはじめ我が国の電力関係者が一丸となって進めてきたUHV送変電国際規格化作業は、日本が開発した世界最先端技術を取り入れた変圧器、遮断器、高速接地開閉器、および避雷器などについて、2012年末までにほぼ作業完了させることが出来たとのことである。

世界貿易へのパスポート

これが近々新規格として発行すれば、自由な貿易を展開するために世界貿易機構(WTO:World Trade Organization)が「貿易の技術的障害に関する協定」で定めた国際基準に準拠することを要求している貿易条件をクリアーするため、大手を振って世界に広めていけることとなる。
今後の世界は中国、インドをはじめとして発展途上国を中心に電力需要が増加するのに従い、UHV送変電系統を取り入れる国が多く出るものと予想されるので、このタイミングでの規格化(標準化)は日本の技術を世界に広めるに当たりパスポートを取得したようなもので最良の環境が整えられたものと言えよう。
繰り返すが、従来から、さまざまな分野の国際規格に関しては、欧米に席巻されており、電力分野でも同様の状態であって、我が国は常にその後塵を拝してきたが、今回の規格化は、この世界的な流れを大きく変える正に画期的なことであり、世界のUHV市場での日本の存在感向上に繋がることは間違いなく、10年以上にわたりUHV機器の実証試験を続け、成熟性の高い我が国のUHV技術が世界に羽ばたくチャンスとなろう。

次はUHVシステム全体の規格化

池田久利氏は、更に今後の標準化活動についてはUHVの「システム全体の規格化」をするべきであると言われており、「計画面、デザイン面、技術的必要条件、建設工法、信頼性、有効性、設備運用および管理」などを網羅して規格化する技術委員会(TC)を立ち上げたいとのことで、近く関係者に働きかけ10月頃に立ち上げを目指すとのことである。

池田久利氏

池田久利氏にあってはIECのなかでセクターボードSB1(送電および配電)の議長として2004年以来国際規格化を先導されてきたが、2011年にACTAD(Advisory Committee on electricity Transmission And Distribution)に名称変更し規格化のアドバイザー会議の議長として引き続き活躍されている。
池田久利氏は、以上のように一貫して10年におよぶ長年に亘りUHV規格化のキーマンとして尽力されてきたが、政治の世界でトップが短期間で次々と変わるのとは違い、特定の方がセクターボード議長として長期に亘り粘り強く活躍されたことが今回の規格化が成功した最大の要因と思われる。

池田氏は現在、東京大学大学院・工学系研究科・電気系工学専攻の特任教授でおられるが、同大学・先端電力エネルギー・環境技術教育研究センター主催のイブニングセミナーで、2013年3月13日に「送配電分野における国際標準化活動の最前線」のテーマで講演をされた。 私も末席で聴講させていただいたが、その概要はIEC SB1議長としてUHV規格化に携わったご苦労の話で裏話を交えて講演をされた。
池田氏が講演の中で強調されておられたのは、技術の分野でも国際間の駆け引きが大きく結果を左右する熾烈な競争の中で日本の主張を貫き通すには「仲間作り」が極めて大切だと言うことであった。
世界の多くの技術者と時間をかけてじっくり話をする機会を設けて、お互いの理解を深める努力が大切であり、したがって出来るだけ長期わたり組織の中で活躍することが有利であるようだ。

ただ、このロビー活動は極東に位置する日本はIEC本部のあるヨーロッパから遠いため大変疲れるので、ご自身の経験から健康を保持する努力が特に求められるとのことであったが、健康を保持され10年に亘る議長職を全うされ日本発のUHV規格化を成し遂げられたご努力に心から敬意を表するものです。
なお、このセミナーの最後では池田教授はこの3月で定年を迎えるとのことで女性の方から大きな花束の贈呈式があった。
しかし、まだ60代半ばでますますお元気なご様子であり、今後も引き続きIECの仕事に従事されUHV等の規格化を先導していただけることを心から祈念する次第です。

No.50 Smart Grid(その9)<国際標準化へ挑戦>The Japanese electrical engineers and companies work hard to get International standard about Smart Grid in a Japanese technique.

米国ニューメキシコ州で実施する日米共同のスマートグリッド(Smart Grid・次世代送電網)実証プロジェクトのうちロスアラモスに建設した実証サイトが完成し、2012年9月17日現地で運転開始式が行われた。
この実証プロジェクトはニューメキシコ州政府や米国エネルギー省(DOE)傘下の国立研究所などと共同で進められているもので、日本側からは東芝、日立製作所など11社と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が参画している。

このサイトでは、発電出力1MW(1,000kW)の太陽光発電システムを需要規模2~5MWの配電網に連系し、ナトリウム硫黄(NAS)電池、鉛電池、スマートメータ(次世代電力計)1,600台を集中導入すると共にエネルギー・マネージメント・システム(EMS)など各社の製品と技術を投入、天候により発電出力が変動する不安定な出力に対して最適な制御システムの開発・運用の実証を進めるものである。
輸出立国としては日本にない環境で、日本では出来ない実証を行うことで、より広範な環境に対応できる知見と分析を行うことが重要で、社会インフラ輸出には当初から海外の常識に合わせた開発が求められるとの狙いに基づき、このサイトの実証プロジェクトを進めている。
日本側はこのプロジェクトを通じ、ニューメキシコ州での再生可能エネルギーの導入拡大や省エネ推進に貢献すると共に日本のスマートグリッド技術を国際標準とするための取り組みの一環として位置付けている。
さて、ロスアラモスは北米大陸を縦断するロッキー山脈の山中にあり、標高は2,200m以上であるため日本では実証できない各種の高標高対応試験ができ、年間300日程度が晴天と日照環境に恵まれる一方急な荒天に遭遇するという厳しさも持ちあわせた環境で、太陽電池モジュールの品質向上のために貴重なデータが取れると期待される土地柄である。

下記にNEDOのプレス・リリースページのURLを示す。
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100149.html


次に、スマートコミュニティーの実現には様々な分野の知見を持った企業や研究機関が技術を結集し情報を共有することが必要だが、この目的を達成するため2010年4月にスマートコミュニティー・アライアンス(JSCA)が官民の枠を超えて結成された。
(当トピックス No.32 Smart Grid(その7)<官民挙げて動き活発化>に掲載)

当時の会員は284社・団体であったが、2012年9月現在では382社・団体にまで成長している。

具体的な取り組みを進めるため、
●国際戦略
●国際標準化
●ロードマップ
●スマートハウス・ビル
の4つのワーキンググループ(WG)が設置されている。

このうち、国際標準化WGは、各種スマート化関連技術の国際標準化に取り組んでおり、
●蓄電池
●送配電網管理
●エネルギー管理システム(EMS)
●次世代自動車
●通信インターフェース
の5つのサブWGを設置して、日本の製品をそのままで海外展開し販売できるような環境を整備していくこととしている。

2012年3月には、ゼネラルエレクトリック(GE)やグーグルなどが参画する米国の「スマートグリッド相互運用パネル(SGIP)」と協力に向けた合意文書を締結したほか、2月にはJSCA幹事会社の働きかけにより国際標準化機構(ISO)にスマートシティー評価指標の国際標準化を検討する分科委員会を設置することができたなどの成果を出しているとのことである。


次に、国際標準化の話から逸れるが、原子力発電所などの安定した大容量電源が無く、且つスマートグリッド技術が導入されていない送電網に、天候により発電出力が大きく変動する太陽光発電システムなどの不安定な再生可能エネルギーが大量に連系されると、電力の品質が劣化し産業活動に悪影響を及ぼす実例が出ているニュースを紹介する。

2012年9月19日電気新聞・ヨーロッパ通信欄に掲載された記事のサマリーである。

ドイツでは、昨年メルケル政権が原子炉7基を停止させて、電力系統に再生可能エネルギーの比率が増加して以来、瞬間停電の回数が増えたため、今年に入って自家発電装置に対する需要が急増している。
ドイツの需要家団体(産業エネルギー需要連合会)は、瞬間停電の回数についての調査結果を2012年6月に公表したが、「2011年に政府が7基の原子炉を停止して以来、電力供給に関するトラブル件数が約30%増えた」と主張しており、また、今後電力供給の質が下がっていくだろうと予測する企業の比率は40%に達すると発表している。
実際に自家発電装置を導入する企業が増加し、製造業界向けの発電装置を製造する会社の売上高が10%以上増えている。
特に積極的に自家発電装置を導入しているのは、電力を大量に消費するメーカーで、瞬間停電や急激な電圧変動に備えるため200億円を投資した会社がある。
今後、連邦政府は電力供給に関する不満をどのように解消するのだろうか。

以上のように、発電出力が天候により左右される不安定な再生可能エネルギーが増加しているドイツでは、安定した大容量電源の原子力発電所を停止させているため、電力系統の質の低下が顕在化しており、今後の政府の対応が注目される。
発電出力が不安定な再生可能エネルギーの増加に対しては、原子力発電所などの安定した大容量電源が十分に導入されていなければならないが、同時に次世代送電網・スマートグリッドを導入し電力の質の低下を抑制する対策をとることが大切である。
しかし、次世代送電網に必要な分散型蓄電池およびエネルギー・マネージメント・システムなどの開発・導入には今後極めて多額の費用を要するため国際標準化を図るなど、経済的・効率的な設備形成を進めることが求められている。 このため、世界各国では最経済的スマートグリッドの開発に鎬を削っているが、我が国も国際標準化戦争に後れをとらないよう、上述の通り官民一体となり日本の技術で国際標準を勝ち取るために日々挑戦している。

No.49 インド大停電From Monday, July 30, 2012 through 31st Tuesday, the blackout of the world's largest scale occurred in India, and 680 million were affected more than half of the total population.

2012年7月30日(月)から31日(火)にかけて、インドで世界最大規模の停電が発生し、全人口の半分以上6億8千万人が影響を受けた。
停電は30日(月)未明の午前2時半頃、北部系統で発生し、デリー首都圏など3億7千万人に影響を与えた。
交通機関(180万人の利用客があるメトロを含む)、公共施設(病院、空港、道路信号、水道を含む)など全て停電し大混乱になった。
公共施設では予備発電機を使用して機能を何とか維持したが、デリーの一般住民の人々は湿度89%、温度32度の蒸し暑い中で、エアコンが停止して睡眠をとれず外に出て涼むほか無く、寝不足になったり体調を狂わせたとのことである。
ただ、大半の停電区域では午前中に回復し、残りの地域でも午後にはほとんど回復したそうである。

ところが、翌日の31日(火)午後1時頃、再び北部系統で停電が発生し、この停電地域は北東部系統および東部系統に広がり6億8千万人が影響を受けた。
交通機関は広範囲に亘り運休し、何千にも上る病院や工場が自家発電を余儀なくされる一方、炭鉱労働者は一時的に地下に閉じこめられるなど、経済的損失は何億ドルにも達しそうである。
病院や工場では、初日の30日の停電ではバックアップ用の電源システムで再起動させて影響を回避したところも、二日目の31日の停電ではバックアップシステムをほとんど使い果たしていて影響を大きくしたようだ。
この停電の影響は同日午後9時半頃にはデリーで復旧し、他の地域でも80%ほど復旧した。

この停電の詳しい原因は不明であり、停電の原因の究明については、電力相の発表によるとインド政府が指名した3人の特別委員会が担当するとのことである。

インドの電力系統は、右図の通りで、「北部」、「東部」、「北東部」、「西部」および「南部」の5ブロックに分けて運用している。
2006年8月以前は、「北部」、「北東部+東部+西部」、「南部」の3ブロックに分けて系統運用してきたが、2006年8月以降は「北部、北東部、東部、西部」は、交流400kV系統で連系し同期化しており、南部系統だけが±500kV直流送電線と直流連系設備HVDC(Back To Back)で直流連系(非同期)されている。
基幹送電系統は、右図は2007年現在のものであるが、2008年以降は765kV送電線系統も新設増強され、またHVDC(BTB)も1箇所増設され合計4箇所となり、一段と強化された系統になっている。

系統規模は、地域別最大出力(2007年度)で、
「北部」:約29.5GW(29,500MW=2,950万kW)
「東部」:約10.7GW
「北東部」:約1.4GW
「西部」:約29.4GW
「南部」:約24.4GW
である。

また、送電線の回線延長(2008年末)は、
765kV:約2,500km
400kV:約82,700km
である。

今回の大停電の原因となる要因を列挙してみると以下のことが挙げられよう。

  • インドでは、長年に亘り需要の増加に発電設備の増加が追いついていけず、2000年以降毎年のピーク時の電力不足率は常に10%以上で、2007年は約13%であった。
    (2001年:ピーク需要約79GW、最大出力約70GW、不足率約11%)
    (2007年:ピーク需要約109GW、最大出力約95GW、不足率約13%)
    最近は発電所の新増設に努力して改善の方向にあるものの今年の5月の不足率は7.5%であり、7月の数値が発表されていないが需要がピークとなる夏を迎え不足率が拡大したのは間違いないようだ。

    その原因は、原子力発電所建設計画が、地元の反対にあい遅れていること、および電力供給量の70%を占める石炭火力の今後の発電計画では、石炭資源が豊富なインドだが、その品質は低劣で灰分が多く最新の発電設備で使用するには問題が多く海外に良質の石炭を求めざるを得ないが輸入価格は上昇する一方で、建設計画が経済難で頓挫しようとしていること等であろう。
    石炭発電はもはや安価な電気ではなくなっているようである。
  • 一方、政府は電力不足の要因を、現在2億人以上いるとされる中間層の増大にあると発表している。
    2010年度では一人当たりの電力使用量は約820kWhで先進国に比べて少ないものの、この6年間で34%も増えたため、増大する需要に電力開発がついて行けない状況が続いていると言っている。
    ちなみに、インドでは計画停電、計画外停電が日常化しており、多くの工場や事業所のみならず、中流以上の一般家庭でも自家発電や無停電電源装置(UPS)を設置せざるを得ない状況にある。
    例えば、この夏、デリー近郊の日本人が多く居住するグルガオン地区の一部では、一日に12~14時間も停電する事態となって、これが水の供給不足に拍車をかけ、各地で断水騒ぎが相次いだとのことである。
  • 送配電損失率は先進国では数%であるが、30%以上と極めて高い。
    なかでも配電損失の大きさが際だっていて、29州のうち11州で配電損失率が40%を超えており、これには設備や技術上の問題もあるが、盗電や料金の未回収といったノンテクニカルロスが占める割合が大きく、こうしたロスによる財政損失は州電力セクターの財政を悪化させる要因となっている。
    州電力セクターでは電力設備の建設や維持管理に必要とされる資金が慢性的に不足しているため配電設備の増強が進んでいない大きな要因となっているようだ。
    また、電力料金を発電公社および民間発電会社に正常に支払いできないため、発電公社および民間発電会社では発電すればするほど赤字が出る状況で、発電電力が不足する要因になっているようだ。
  • 今年のモンスーンは弱く平年の半分以下の雨しか降っておらず、今夏の気温をより高くし連日38度を超える気温が続いていたため、人々のエアコン使用を増加させた。
    また、水力による発電量が減少すると共に農家のかんがい用水も不足して、くみ上げなどに使用する電力量が増えたため電力不足に拍車をかけたのも大停電の原因のひとつとみられる。
2012.10.14追記

大停電の原因

インド大停電の直接的原因は、765kV基幹系統の運用にあった、との特別委員会の調査結果が8月下旬に出た模様である。
図は冒頭に掲げた2007年現在の系統概略図に、その後2012年までに建設・増強された765kV送電線と±500kV直流送電線およびDC(直流)変換所すなわち直流連系設備HVDC(Back To Back)を追記したものである。
すなわち、2007年以降に建設された765kV送電線のこう長は3,600km以上、また±500kV直流送電線は北部系統~東部系統間約960kmの線路が1ルート、および北部系統~北東部系統間約1,600kmの線路が1ルート、更に500MWの直流変換所(直流連系設備)1箇所が増強されている。
このように基幹系統設備は着々と整備されているようだ。

このように送電網設備が強化されている状況のなかで、今回の大停電が発生した直接的原因は、設備面の問題ではなく運用面に問題があったとのニュースがある。
インド送電公社(PGCIL:Power Grid Corporation of India Ltd)が保有する765kV送電線のうち、右図に示す北部系統のアグラ変電所と西部系統のビナ変電所間の「アグラ・ビナ線(AGRA-BINA線)」は、他の送電線の多くが1回線送電線であるにもかかわらず重要送電線であるため2回線送電線(1回線2ルート)であるが、停電事故が発生する6日前の7月24日から1回線を停止させて設備増強作業を実施していた。
それに加えて、大停電の1日前の29日から、がいし交換のためPGCILが保有する同一系統の送電線2線路をも停止させていた。

更に、西部系統のビナ(BINA)変電所に連系する系統のマディヤプラデシュ(Madhya Pradesh)州政府が運営する2線路の送電線も停止させており、これらの重複した線路停止のため一部の送電線が過負荷となり大規模停電になった可能性があるとの調査結果が出た。

この見解については電力相が国会で報告したとのことである。 電力業界関係者からは、モンスーンによる降雨量の減少によって農業分野での電力需要が増加している時期に、重要送電線等を停止させて諸作業を行ったPGCILの姿勢に対して疑問の声が出ているとのことである。

No.48 国際連系長距離UHV直流送電線の実現可能性調査実施Feasibility Study about long-distance UHV direct current power transmission line connected globally has been carried out in Japan in 1998.
It was the investigation that assumed that a power transmission line was built between approximately 2,500km from the Siberia district of Russia to Japan.

1.送電線の概略史

本格的送電線が世界で初めて運転開始したのは、電力会社が直流方式か交流方式か、どちらを選定するか混沌としていた時代で、1891年(明治24年)ドイツ・フランクフルトにおいてである。
その設備は三相3線式交流送電線で、電圧15kV、送電容量200kW、こう長175km、周波数40Hzであった。
「世界初の送電線誕生の物語り」の項参照

この三相3線式交流送電方式は、他の方式と比べ極めて送電効率の良いもので、交流方式は電力系統の規模及び電力需要家の要求に応じて自由に電圧を昇降できる便利さと相まって、その後今日まで121年間にわたって世界的に電力系統標準方式として適用されてきた。
その間、社会・経済の発展に伴い長距離送電・高電圧大容量送電のニーズが次々と送電線技術者達に課せられ、絶え間ない技術開発がなされてきた。
送電線技術者達に対しては、いつの時代でも発展する社会からの送電容量の増加要求が強く、それに応えるには電圧を昇圧させることが最適な解であったため、常に電圧上昇技術の開発に取り組んできたが、どの時代断面をとっても最高電圧を2倍に高めようとする技術開発は、棒高跳びで2倍にしたバーの高さを飛び越えようとチャレンジするのに似て常に困難を極めた。
しかし、送電線技術者達はそれを何度も何度も克服し今日に至っている。

その結果、今日では、電圧が当初の70倍を超える超超高圧(UHV)1100kV、および送電容量は6万倍以上の約1,250万kW(12.5GW)(1回線当たり)、こう長数百kmの大型・大容量送電線が実用化されており、我が国では世界最先端の送電線が建設されている。
なお、周波数は世界的に50または60Hzに統一されている。

一方、直流方式は電圧昇降の自由度がないため、直流単独では今日のような大規模電力系統を構成することはできず、交流とのハイブリッド形態が求められる。
従って、直流送電線を導入する場合は交直変換設備が必要になるが、交直変換機器は高価な割には変換能力が劣っていたので最近までは海底ケーブル区間および北米西海岸の一部長距離系統などごく一部でしか実用化されていなかった。

しかし、長距離・大容量送電に対しては直流は有利なため、最近になり交直変換機器の進歩も相まって直流送電線が次のように続々と建設されている。

  • 1982年にはアフリカ、コンゴ民主共和国の±500KVインガ・シャバ(Inga-shaba)線、こう長1,700km、送電容量100万kW(当初56万kW送電)が世界最長の送電線として運転開始した。
  • 続いて1985年にはブラジルのイタイプ(Itaipu)水力発電所~サンパウロ間、約800Kmを結ぶ±600KV送電線2ルート(各ルート315万kW、計630万KW)が運転開始した。
  • インドでは、1990年に±500KVこう長814kmの送電容量150万kW送電線が建設され、1999年には±500KVこう長752kmの送電容量150万kW送電線が建設され、更に2007年までに3番目となる±500KVこう長約1,200kmの送電線が建設されている。
  • 中国では、2009年に±800KVの雲南-広東線が運転開始され世界初のUHVDC送電線が誕生すると共に、2010年に±800kV向家堤(Xiangjiaba)-上海(Shanghai)線(720万KW)が運開し、そのこう長が1,916.5kmで世界最長記録を更新するなど、超長距離大容量の直流送電線が各地で建設されている。特に中国では、電源が西部に偏在し、電力需要地が2,000~3,000km離れた東側に偏在している関係上、その間を結ぶ超長距離大容量の直流送電線が「西電東送」のキャッチフレーズの元、10ルート以上計画されているようで正に直流オンパレードである。

今後は、世界的に電力需要地から遠く離れた未開発の水力発電適地に大規模発電所を建設し、超長距離・大容量の直流送電線を適用することが各地で計画されていくものと思われる。

2.国際間連系送電線の現状と今後の動向

国境を越えて国際連系する送電線は、アメリカとカナダの国境であるナイアガラ発電所から出る送電線が電気事業草創期から建設されていて、現在では両国の東西に長く接する国境を跨いで多くの送電線が建設され、電力系統が連系されて一体的に運用されている。
ヨーロッパではEU圏の諸国はお互いにメッシュ状に連系送電線を建設し電力を融通し合っている。
国境が海で隔てられているところでは、海底ケーブルを敷設し直流で連系を図っており、スウェーデンとデンマーク間はDC±250KVおよび285KV、スウェーデンとフィンランド間はDC±400KV、フランスとイギリス間はDC±280KV、また、イタリアとギリシャ間はDC±400KVで、それぞれ連系されている。
また、旧ソ連邦の諸国間でも500kV送電線で連系されており、現在でもその資産を引き継いで運用されているようである。
アフリカ南部では、南アフリカを核として9カ国が国際連系して運用しており、そのために、DC±533KVおよび400~220KVの線路をを国際連系送電線として運用している。
これらの系統連系諸国は、南アフリカ、コンゴ民主共和国、ザンビア、ジンバブエ、モザンビーク、ボツワナ、ナミビア、レソト、およびスワジランドである。
今後、更に、連系地域を北へ延ばして、ケニア、タンザニア、およびザンビアとも国際連系する計画で、質的・量的に一層進展させていくようだ。
一方、アジアではタイとラオス間で115kV、230kV、500kVで連系しており、タイとマレーシア間では132kVおよびDC±300kVで連系している。
また、マレーシアとシンガポール間ではDC±230kVの2条の海底ケーブルで連系している。
北東アジアでは、ロシアのシベリアにおける豊富な水力資源開発をロシア及び中国が共同で行うプロジェクトが進められ、水力発電所を共同で建設し500kV系統で連系してそのほとんどを中国に送電している。

さて、国際間連系送電線の今後の動向だが、先にも記したとおり、世界的に電力需要地から遠く離れた未開発の水力発電適地に大規模発電所を建設し、超長距離・大容量の直流送電線を適用して周辺国に送電することが各地で計画されていくものと思われる。
具体的には、

  • アフリカ、コンゴ民主共和国の、コンゴ川の河口に近いインガダム水力発電所(滝利用の発電所では世界最大、最終的には3,900万KW(39GW)を計画)からアフリカ各国および地中海を横断してEU諸国へ送電するプロジェクト
  • 南アメリカ大陸・ブラジルで今年完成が予想されるアマゾン川~サンパウロ間約2,500kmのHVDC±600kV直流送電線に引き続き、アマゾン川での豊富な埋蔵水力の開発による周辺国への送電プロジェクト
  • 北米大陸のカナダ北部における豊富な埋蔵水力の開発によるアメリカへの送電プロジェクト
  • ロシア・シベリア地域の豊富な埋蔵水力の開発による日本、中国、韓国、アメリカなど周辺国への送電プロジェクト

などが考えられる。

以上は主に南北方向に送電線を計画するケースであるが、東西方向に国境を越えて3,000km以上離れた大需要地間に超高圧直流(HVDC)送電線を設けて電力連系を行うと、その両端の場所では電力ピーク時間帯が2乃至3時間ずれるので新規に電源を開発しなくても既存の発電所の運用を効率的にコントロールできて極めて有効なピークカット対策になるので送電線の建設効果は大きいものと考えられ、今後検討を進める価値が大きいと思われる。

3.国際間連系に関する我が国の取り組み
(国際連系長距離UHV直流送電線の実現可能性調査実施)

我が国では、地域別に10社の電力会社がそれぞれ地域内の電力需要実態に合わせて発送配電インフラを適切に構築し、例えば東京電力では世界に先がけ、UHV 1000kV 2回線の大容量送電線の開発・実用化を達成するなど送電設備充実に努力し、世界で最も品質の良い電力運用をしている。
2006年(フランスのみ2004年)の一需要家当たりの年間停電時間を見てみると、米国1時間37分、イギリス1時間28分、フランス51分に対して日本はわずかに19分で、欧米に比較して我が国の電力系統が如何に優れているかが分かる。
そのため、従来はあえて国際間連系を検討しようとする気運は全くなかった。

しかし、我が国で最先端を行く送変電・電力流通設備の研究・設計・建設を手がけてきた技術者達は、世界に先がけて超超高圧UHV1000kV設計2回線大容量設備・西群馬幹線を1992年に完成させ、また、HVDC±500kV設計の阿南紀北直流幹線を2000年に完成させたが、今後、世界的に電力需要地から遠く離れた未開発の水力発電適地に大規模発電所を建設し、超長距離・大容量の直流送電線を国際間連系して適用することが各地で検討されていく大きな流れに後れをとらないようにすることが求められると考えた。
すなわち、我が国では従来必要性がないため超長距離、大容量の超超高圧直流(UHVDC)送電線技術の確立に十分取り組んでこなかった故をもって、それが必要になった時点で自前の技術がなければ、他国に相手にされず国家的損失を被る可能性が大きいと思われる。

そうした背景から、彼ら技術者達は、17年前に遡るが、国際活動で友人となった個人的関係を元に「日本・ロシア間長距離UHV直流送電線の実現可能性調査」を推進した経緯がある。
具体的には、1994年、当時の東京電力、電力技術研究所にロシア、シベリア科学アカデミー所長代理ベリアエフ教授から日露間直流連系技術の勉強会をしたいとの提案がなされた。
この提案を受けて1995年から1997年にかけて、元東京電力、電力技術研究所所属の安井充工学博士の協力を得ると共に、ロシア側の専門家チームの2度にわたる来日を含め、双方で詳細な技術検討を行いその結果を「次世代直流送電線の設計に関する研究報告書(実現可能性調査)(1998年4月)」にまとめた。

以下に安井充工学博士が中心的になりとりまとめた上記の実現可能性調査(Feasibility Study・フィジビリティスタディ)の概要を紹介する。

まず概要紹介に先立ち、高電圧直流送電が交流UHV送電に比べて有利な特徴を挙げると以下の通りである。

  • 送電々力10GW(1,000万kW)を2回線で送電する場合、経過地条件にもよるが交流1000KVに比べておおよそ400km以遠では直流送電の方が経済的になる。
  • 送電線がコンパクトであり、環境にやさしく馴染み易い(交流500KV級の鉄塔程度の規模)。例えば、直流送電線の発生する電界、磁界、気中イオンは自然環境レベルと同程度以下であるから議論になりにくい。
  • 送電線の建設費が低廉で初期投資が少ないので計画の実現性が高い。
  • 多くの島嶼をもつ東南アジアや極東の国際連系等に適用する場合、海底ケーブルを含む連系線に直流は好適である。
  • 国際間連系に於いて、系統夫々の質的な相違の影響(周波数、電圧の変動、短絡、地絡電流)を受けること無く電力の経済融通が可能である。連系によりそれぞれ国内に於ける電源の予備力節減が可能であるのみならず、東西間長距離連系の場合、時差によるピーク電力の節減に役立つ。
  • 水力電源のような自然エネルギーを長距離に亘り輸送する方式として、最適である。

ただ、直流送電線は地磁気観測に支障を与える懸念があるため、全国に点在する一等地磁気観測点に支障の無いようルート選定しなければならないので、ルート選定上の考慮は必要である。

以上のような利点に着目すると、「今後ポストUHV大容量送電技術は、国際的に汎用性が高い高電圧直流送電が有力であろう」というのが研究報告書の中心的まとめ役をされた安井充工学博士の見解である。

さて、フィジビリティスタディの概要であるが、直流連系システムの経済的送電方式(送電々圧、回線数)及び直流送電線の概念設計(±800KV及び±650kV)としてまとめられている。

検討ルート案は、極東シベリアウクルスク水力発電所(5GW)が起点である。
途中でコムソモルスク系統(5GW)からの電力を連系(合計10GW)し、タタール海峡(間宮海峡)を横断の後、サハリン(樺太)を南下する。
さらに宗谷海峡を横断して北海道から津軽海峡を渡り本州北端に至る全長約2,500kmとしている。
なお、将来はオホーツク海沿岸のツグルスク潮汐発電所等からの送電を考慮し日本へ25GWの送電も議論されたとのことである。

電圧は、±650kVから±1000kVの間を検討した。
図は±650kV、および±800kVの例であるが、2回線自立型の鉄塔は日本側に建設する場合を想定したものである。
日本側に建設を想定した±650kV 2回線自立型の鉄塔は、交流500kV鉄塔と同程度であり、±800kV 2回線自立型の鉄塔はUHV1000kV鉄塔に比較して20%程度低くなるので環境に与える影響を低減させることができる。

±750kV 1回線型はロシア側に建設する場合を想定したものである。
ロシア側はこの鉄塔を2ルート平行して建設する案を想定した。

先ず「総論」に於いて、交流1000KV送電線と対比させながら、がいし及び気中絶縁設計を示し、又海峡横断ケーブルヘッド用ブツシングの耐塩設計の見通しについて述べている。
次いでコロナ騒音、ラジオ雑音、電界、磁界、イオン流帯電圧、イオン密度の特性を解説して推定を行い、交直の相違をクローズアップさせた。
又、送電線下の電界、磁界による人体への誘導電流密度を計算して両者の比較を行ない、健康影響評価を行なった。
その理由は、誘導電流密度がWHO,ICNIRP等で制限値の判断に用いられていることに拠る。

次に「各論」として、
1.経済的な送電々圧の選定(±650kVから±1000kVの間を検討)
2.基本設計(各設計数値と線路定数等)
3.絶縁設計
4.環境影響予測
5.機械的設計
を記述し、夫々に於いて設計の考え方を述べ、興味のある方が設計をトライが出きるよう計算手順と計算例を付している。
一部にコンピュータによる計算結果を含めたが出来るだけ手計算によるデータを示し、プロセス認識の重要性をアピールしている。

特に下記に重点を置いている。

「1.経済的な送電々圧の選定」に於いて、各国の建設コスト、電力コストを考慮した経済的連系送電々圧とこれらのベースになる架空送電線、海底ケーブル及び変換所の概念設計の例示。

「2.基本設計」に於いて、送電線の基本設計一覧表及びと線路常数(サージインピーダンス)の計算例(雷事故率評価等に適用)。

「3.絶縁設計」に於いて、常時の送電状態における交流と同程度のフラツシオーバ確率になる直流がいし個数の選定の考え方、過去20年の気象記録に基づく設計塩分付着密度の推定、EMTP(electro-magnetic transients program)にもとづく地絡誘導サージに耐える気中絶縁寸法の算出、耐雷特性の概略評価(直流固有の極性による不平衡絶縁差を考慮)。

「4.環境影響予測」に於いて、環境基準値(日、露)、各予測値と計算式として電界強度、イオン密度、イオン電流密度(理論式)、イオン流帯電圧(実験式)、帰路導体有り無しの遠方磁界(計算式)、電線表面電位傾度(計算式)、ラジオ雑音(実験式)、コロナ騒音(実験式とコロナケージによる計算値との照合)の紹介。

「5.機械的設計」に於いて、シベリアの気象条件に基づく高温李、低温季設計荷重の推定。着雪及び着氷荷重の設計荷重の再現値の推定を行った。
又現地の荷重条件、地質地形条件に基づき鉄塔、基礎の設計を行い、各国固有の建設労務単価を参考にして建設費を箕出している。

特に、カナダ、オンタリオ州のコンサルタントのサムテック社に支線鉄塔の設計手法の検討を依頼し、これに基づきロシア国内に於ける連系線用支線鉄塔の設計を行なって建設費を算出し、日本国内に放ける自立型送電線の建設費の1/7になることを示している。
これは、ロシアのベリヤエフ教授の提示したロシア国内に於ける架空送電線の建設費が日本のそれのほぼ1/10程度であり、これらの相違を解明する目的で検討したものである。

さて、本論文を作成してみて、末だ一部に未検討のところがあると研究報告書の中心的まとめ役をされた安井充工学博士は指摘しておられる。
すなわち、

  • 特に海岸に於けるケーブルヘッドの汚損対策設計が残されており(±800KVの場合シリコンブッシングの開発適用が必要)、ブツシングの耐塩設計の見通しが送電々圧選定の決め手になるものと考えられること、
  • 又がいし装置のコロナ防止の検証試験や重塩害地域に於けるがいしの部分フラツシオーバによる騒音と受信障害防止対策としてのRTVがいし(常温シリコン加硫磁器がいし)の実用化や複合がいしの開発適用等の課題が残されていること、

である。
これらについては、適切なリードタイムをもって実証試験に着手すれば直流連系線の実用化は可能と思われると結論づけている。

論文紹介は以上であるが、しかし、いきなり日本に隣接する中国、韓国、ロシアなどの国々と国際間電力連系の技術課題に公式に取り組むには、領土問題を初め政治的背景から難しく、当面は実現性がないと思われる。
昨年3月の東日本大震災による津波で発生した東京電力福島第1原子力発電所の事故に伴い、原子力発電所の定期点検後の再稼働が難しい状況で電力需給が全国的にタイトであることから、「だから外国から電力を輸入すればよい」という考えに対しては、電気は石油・ガスのように備蓄が可能なエネルギー源ではなく、スイッチ一つの操作で一瞬に相手国の社会経済を大混乱に陥れることができ得るという側面を考えると、当面は、上記の通りの隣国関係から問題であろう。
ただ、将来的には、地球規模で電力エネルギーのより効率的・安定的運用を目指し、多国間国際連系送電網を構築していこうとするうねりは次第に大きくなると思われ、アジア地域に於いては日本、韓国、中国を含め、東北アジア(ロシア・シベリア地区)から東南アジア(台湾、タイ、ラオス、マレーシア、シンガポール、インドネシア、オーストラリア等々)に跨る国際間連系長距離直流送電網により大規模な国際連系系統が構築されていくものと思われる。 この際には、上記の研究報告書(実現可能性調査)が大いに活用されるであろう。

ところで、昨年3月の東日本大震災における大規模電源の被災や原子力発電所の定期検査後の再稼働の問題により、全国大で電力の供給力が大幅に不足する事態が発生したが、このような状況に於いて、東西の周波数変換装置(FC)や地域間連系線の容量の制約などにより、供給力の広域的な活用には限界があり、国民生活に大きな影響を与えた。
そこで、経済産業省に設置された「電力システム改革専門委員会」の下部機構として設置された「地域間連系線等の強化に関するマスタープラン研究会」では、この対策として地域間連系線等の強化などについての専門的な検討を行ってきたが、この度、平成24年3月に中間報告がまとめられた。
この中間報告によると、FCの現状容量103.5万kWを2012年度中に120万kWまで増強すると共に、2020年度を目標に210万kW(90万kW増強)とし、それ以降出来るだけ早期に300万kWまで増強するとしている。
この増強策については、既設FCサイトの増強の他に、地点のリスク分散の観点から東地域(東京エリア)と西地域(関西エリア)を新規に直接連系する直流送電線を新設する案が含まれている。
この直流送電線の案は、関西地区の500kV基幹系統と東京地区の500kV基幹系統を日本海側をルートとしておおよそ400kmの間を結ぶもので、送電容量は90万kWを想定しているが、長期的に東西連系容量の更なる拡大が必要となった場合への対応を考慮して180万kWの送電が可能な±250kV双極2回線設計を想定している。
(最終的に実施案は、No57(2013.10.08)に掲載したとおり、中部電力~東京電力間の約100kmを結ぶHVDC送電線として実施されることになった。)

我が国では関西電力が±500kV設計(250kV運転)双極1回線のHVDC直流送電線・阿南紀北線こう長約50kmを2000年に建設しているが、長距離に亘るHVDC双極2回線直流送電線の建設技術については未経験の領域にあり、もし、これが実施に移される場合には安井充工学博士が中心的になりまとめられた前記の研究報告書(実現可能性調査)が大いに活用されるに違いないと思われる。

No.47 世界初(最古)の全線鉄塔送電線を発見(メキシコ)It was discovered that there were world's oldest power transmission line steel towers in Mexico.

1.世界初(最古)の全線鉄塔送電線(ネカクサ(Necaxa)-エル・オロ(El Oro)線)を発見

世界で初めて鉄塔を建設したのは、アメリカ、カリフォルニア州のベイ・カウンティ電力会社で、1901年にユーバ川のノースフォーク(North Fork)水力発電所の発電電力をサンフランシスコに送電する60kV木柱送電線を建設したが、幅約1kmのサンフランシスコ湾を横断する箇所で木柱構造では横断は不可能であり、世界初となる送電用1回線型鉄塔2基を建設し、1901年4月27日に運転を開始した。
しかし、それは汎用ではなくアームが木材で作られ海峡横断用の特殊構造のものであった。
「世界最古の鉄塔」に掲載

世界で初めて本格的に全線鉄塔を使用した送電線は、カナダで1905年(明治38年)、電圧60kVでナイヤガラ水力発電所~トロント間、約120Kmに建設されており、この送電線は、三角配列2回線鉄塔で、2ルートが並走した。
(写真は長径間箇所の鉄塔で、がいしを3個直列に使用している。)
標準径間は約120m、標準鉄塔高さは約13.5m、主アーム上の2相の地上高は約12mである。
がいしは、全てピンがいしが使用され、場所により、水平角度箇所、引留箇所、などについて各相3個のがいしが直列・線路方向に設置された。
なお、区間により、架空地線を設けた。
架空地線は鉄塔中心に、上線より高い位置までロッドを立て、その頂点に亜鉛メッキ鋼より線を架線した。
詳しくは、ここをクリックしてご覧頂きたい
このタイプの鉄塔は、奇しくも同年の1905年、メキシコでネカクサ(Necaxa)水力発電所~City of Mexico~エル・オロ(El Oro)間、約270Kmの60KV送電線でも使用され、ほぼ同時期に運転開始された。

この成功に刺激され、欧米で次々と鉄塔送電線が建設されていった。

さて、この世界最古の鉄塔については、当サイト開設者がカナダを旅行した際に送電線ルート付近を探したものの確認することは出来ず、既に撤去され残念だが永久に見ることは叶わないと思っていた。
しかし、メキシコについては訪れていないため確認できずにいた。
そこで、現地に行かなくてもGoogle earthを閲覧して送電線ルートを確認できないか、数年がかりで探し続けてきたが、Google earthの画像解像度に対して鉄塔設備が小さいため送電線の確認は難しく、思うように出来ないでいた。

ところが、この度ようやく送電線ルートを発見・確認することができた。
そして、運良くストリートビュー写真の撮影道路近傍に送電線ルートが経過している箇所を見つけることができて、世界最古の鉄塔が建設以来100年を超えて現役で運用されていることが分かった。
その概要図を示すが、この鉄塔構造は、我が国で建設された八百津線および谷村線(当サイト「歴史に残る送電線」に掲載)の鉄塔構造に誠によく似ている。
ついては、下記の座標文字列をコピー(英数文字列のみコピー)してGoogle earthの検索窓に入力すると、画面がその座標場所に自動的に移動するが、そこでストリートビューを起動させると目的の鉄塔写真を見ることができるので、ぜひご覧いただきたい。
座標文字列:「20 00 00.08 N 98 15 33.07 W

がいしは、ほとんど当初の「ピンがいし」から最新型の「LPがいし」に交換されているが、鉄塔は当初建設の世界最古の設備であろう。

この送電線が世界で最古であり、最も長寿の設備で、世界的に誠に貴重な送電線であると言える。

ただ、メキシコ・シティの中心に近い市街化の進展している地域では、既に電線が撤去されて鉄塔のみが残されている状況が確認できており、世界最古の設備は残念だが次第に姿を消す運命にあるように思われる。
チャンスがあれば、設備の存在するうちに現地に行き、鉄塔部材、部材ジョイント方式、など当時の製造技術をつぶさに見てみたいものである。

なお、我が国では、このタイプの鉄塔を参考にしたと思われる送電線路が、下記の通り建設された。

  • 1912年、名古屋電灯により、八百津発電所~荻野変電所間42Kmに60KV八百津線
    (当サイト「歴史に残る送電線」に掲載)
  • 1913年、富士ガス紡績により、66KV東京幹線(後の酒匂川線、峰発電所~駒沢間、73Km)
    (当サイト「特殊なめずらしい形の送電線」に掲載)
  • 1913年、桂川電力により、77KV谷村線(鹿留発電所~目白間、95Km)
    (当サイト「歴史に残る送電線」に掲載)
  • 1920年、揖斐川電力会社により、当初44KV後に77KVに昇圧、大垣送電線、こう長29.3km
    (現在イビデン株式会社の所有となり、この型式の鉄塔では現役運用されている唯一の送電線である)
    (当サイト「歴史に残る送電線」に掲載)

しかし、八百津線および酒匂川線は既に全線撤去され見ることはできない。
また、谷村線も全線撤去されているが、ごく一部分だけは撤去の際に鉄塔だけを残して撤去しており、朽ちた鉄塔を10基以上見ることができる。
大垣送電線は、建替が進んでいるが一部分では送電線草創期の当初設備を現役状態で見ることができる誠に貴重な送電線である。
写真は、現役の大垣送電線の写真であるが、Google earthで見られる世界最古のメキシコの送電線に大変よく似た鉄塔であることがよく分かる。

2.世界初(最古)の全線鉄塔送電線(ネカクサ(Necaxa)-エル・オロ(El Oro)線)の技術解説

110年前に発行されたElectrical World誌(1905年10月28日版)に(ネカクサ(Necaxa)-エル・オロ(El Oro)線)の技術解説が掲載されていたので、以下に紹介する。
図がネカクサ=エル・オロ線のルート概要図である。
送電線は、カナダで建設されたナイヤガラ-トロント線と同様、全線に亘り2回線矩形鉄塔を使用しており、ネカクサ水力発電所からメキシコシティまでの154.5kmの区間は2ルート4回線であり、メキシコシティからエル・オロ間119.5kmの区間は1ルート2回線である。

本送電線は、奇しくもカナダで建設された全線鉄塔送電線・ナイヤガラ-トロント線と全く同一時期にメキシコで全線鉄塔使用の送電線として建設されたもので、ほぼ同時に運転開始している模様である。
世界記録が全く異なる国で同時に達成されたのは、誠に珍しいことである。

本送電線は、メキシコの電力会社(Mexican Light and Power Company)が、首都のメキシコシティから約160km東北の山岳地帯にある、流量豊富で大きな高低差がある地域を流れているタナンゴ(Tanango)川と,ネカクサ(Necaxa)川を開発して、約6万kWの発電電力を得て、首都の電灯・電力に供給するとともに、更に西に約120kmの所にあるエル・オロの世界最大の金鉱山に電力を供給する目的で建設したものである。
上記電力会社は、長期に亘り安定した電力運用を目指し、全線鉄塔で建設することとしたものである。

写真は、2つの発電所開発計画のうち、1番目の開発地点の写真で、画面下部中央にに発電所があり、右の滝はネカクサ滝である。
崖の上部からほぼ垂直に発電所に水圧鋼管が設置されているが、1.6km上流のダムから引かれたものである。
また、画面上部遠方に白い建物が左右に広がっているが、発電所建設工事用仮設建物群である。

右写真が使用されたベルトン水車で、発電機と直結され、第1発電所では、発電機は垂直軸、4000V、5000kW、50Hz、6台が使用された。

送電線は、ネカクサ水力発電所からメキシコシティまで154.5kmの区間は2回線鉄塔2ルート4回線が建設され、メキシコシティからエル・オロ間119.5kmの区間は1ルート2回線である。
電圧は60kV、50Hz、1回線当たり約10,000kWの送電容量を有する設備として設計されている。
計画の全負荷で、ネカスカ水力発電所~メキシコシティ間の損失は8%、また、メキシコシティ~エル・オロ間は5%損失と見込んだ。
回線延長は、857km、使用電線総延長は2,571kmである。

写真は、2回線鉄塔の2ルート4回線区間の鉄塔建設中の写真である。

鉄塔組立工事手順は、カナダの線路と同様に馬の力(もしくは猪苗代級幹線と同様に神楽桟(かぐらさん)と人力)を用いて引き起こし作業で行ったと思われる。
鉄塔設計および鉄塔製作メーカーは、カナダの線路と全く同じと思われ、下部主柱材は3×3×1/4インチの亜鉛メッキ・等辺山型鋼を使用し、クロスアームは4インチ直径のパイプを使用し、頂点の電線を支持する垂直材は3インチパイプを使用しカナダと同じである。
また、大きさもルートと直角方向根開きは4.27m、ルート方向根開きは3.66mとカナダの設計と全く同じであり、電線支持点高さも頂点電線で14m、下部2条の電線で12.2mとこれも同じである。
ただ、基礎材の根入れ深さは、カナダでは1.8mに対して1.5mとしており、若干細部では異なる設計をしているようだ。

写真は、架線完了した状態の写真である。
電線仕様は、Electrical World誌によると「six-strand copper, 1/2 in. diameter,」と記載されているが、6本撚りというのは無いので、中心の1条は数えないで外側だけの撚り線数を記したか、あるいは中心の1条は麻芯を用いた電線かと思われる。

外径1/2inすなわち12.7mmの電線の断面積は7本撚りが全て銅であれば、約100m㎡となりカナダの96m㎡と同じになる。
電流容量は約400Aである。
送電許容電流をどのような条件で決定したのか不明であるが、安定度を無視して電線の温度上昇だけに注目した送電容量は100m㎡HDCC(硬銅撚り線)では41,500kWである。

ただ、当面の1回線当たりの送電容量を10,000kWと見込んだので、将来の増設に対してだいぶ余裕がある設計としたようだ。
鉄塔の標準径間は約150mとしたようであり、実際の適用径間長はGoogle earthで確認した限りでは大凡120~150mである。
平均径間長を135mとすると、鉄塔総基数は約3,170基となり、当時としては誠に大規模な工事であったと思われる。

Google earthで見ると、現在の設備は全ての鉄塔に架空地線が設置されており、運転を始めてから耐雷設計を強化する必要が生じ、設備を改造して架空地線を設置したのであろう。

がいしについてもカナダの送電線と全く同じものを使用したと思われ、写真のがいしが使用された。
このがいしは、オハイオ州・東リバプールの「R. Thomas & Sons」会社の製品を使用したもので、全ての製品について出荷前に湿潤状態で60kV耐圧試験を行い、更にそれ以前の組立直後の検査で120kV耐圧検査を行っている。
がいしへの電線の取り付け方法は、バインド線ではなく、カナダと同じように右写真のようなクランプを使用した。
なお、電線から3m下がった位置に通信用の電話回線を併架した。

本送電線は、Electrical World誌(1905年10月28日版)の記事を作成した時点で完成していたそうであり、カナダのナイヤガラ-トロント線とほぼ同じ時点で運転開始したようである。

Google earthで見ると、現在ではネカスカ水力発電所~メキシコシティ間は、当初の2ルートのうち2回線鉄塔1ルートだけが存在し、1ルートは撤去されており、メキシコシティに近い部分は鉄塔は残っているものの電線が撤去されて運用されていない状態である。
また、メキシコシティ~エル・オロ間は鉄塔はあるものの、電線は撤去されていて、運用されていない状態になっている。
ついては、下記の座標文字列をコピー(英数文字列のみコピー)してGoogle earthの検索窓に入力すると、画面がその座標場所に自動的に移動するが、そこでストリートビューを起動させると目的の鉄塔写真を見ることができるので、ぜひご覧いただきたい。

メキシコシティ付近の電線とがいしが撤去された地点
座標文字列:「19 38 58.00 N 98 54 14.00 W

エル・オロ付近の電線が撤去された地点
座標文字列:「19 47 17.81 N 100 07 59.93 W

世界最古の設備は、残念だが次第に姿を消す運命にあるように思われる。

No.46 中国で世界初となる直流UHV+/-1100kV送電線を計画A plan to build the world's first UHVDC+/-1100kV power transmission line in China in 2015 was announced.

2012.02.06電網公司のホームページによると、中国では2015年に向けて世界で初めてとなる直流UHV +/-1100kV、かつ世界で最も長いこう長約2,600kmの送電線を計画しているとのことである。
この計画は「第12次5カ年計画」(2011~15年)期間中に完成を計画しているもので、今後工事計画審査を経て8月以降許可が下りれば2015年完成の予定で建設工事にかかる計画のようである。
この送電線の起点は新疆ウイグル地区北部の准東西部エネルギー基地()で、終点は四川省成都とし、ルートは新疆、甘肅、青海、四川の四省を経て、全長約2,600kmのルートとなるそうである。

(注)「准東西部エネルギー基地」と言うのは、海外電力調査会発行の「中国の電力産業」136ページ図4-19「新彊ウイグル自治区からの送電計画」に掲載された「准東火力発電基地(克垃瑪依市)」ではないかと思われる。

中国の新疆ウイグル地区には石炭の埋蔵量が約2兆トンあり、およそ全国の埋蔵量の40%を占めて、中国の重要な石炭の供給と備蓄基地である。
本計画は、その新彊北部のジュンガル盆地に近い予測埋蔵量が3,900億トンに達する中国最大の炭田で採掘された石炭を発電原料として活用するプロジェクトの模様である。
すなわち、炭田で採掘された石炭をエネルギー需要地である四川省以東に運ぶ方法としては、非常に距離が長く2千km以上の長距離にわたるため、その石炭エネルギーを電力に変換し需要地に届けることが最高率的と判断し、現地に大容量石炭火力発電所を建設すると共に、建設工事費が安価で、送電ロスが低いこと、および安定運転が保証されること等を勘案しUHV直流送電線路を建設して需要地に届けることが最適と考え、このプロジェクトが計画されたのであろう。

中国では既に「雲南-広東線」、「向家堤(四川)-上海線」の2本の直流UHV+/-800kV送電線を運転開始させており、その建設経験を踏まえ世界初の+/-1100kV送電線路建設のための技術的課題はほぼ解決されているものと思われる。
(「雲南-広東線」については、当トピックスNo.33で解説。また、「向家堤(四川)-上海線」については、当トピックスNo.35で解説。)
今から3年後の2015年には、中国で直流送電線電圧の世界記録が+/-800kVから+/-1100kVに更新されるものと思われる。

一方、送電線こう長の世界記録については、現在建設中であるブラジルのアマゾン川からサンパウロまでの直流+/-600kV送電線(当トピックスNo.28で解説)が順調に建設工事が進めば今年(2012年)には完成されるものと思われるが、この線路こう長が概略2,500km以上となると聞いており、その完成時点で世界記録になるものと思われる。
なお、ブラジルの長距離送電線が完成する前に、今年(2012年)春に完成すると思われる中国の「UHVDC+/-800kV錦屏-蘇南線」(線路こう長2,090km予定:注参照)が、一時的ではあるが現在世界記録である「UHVDC+/-800kV向家堤-上海線」のこう長1,916.5kmを更新するであろう(当トピックスNo.44で解説)。

さて、この「新彊-四川線」は上述ブラジルの送電線とほぼ同じ長さと思われるので、国家電網公司のホームページに載ったように送電線こう長の世界記録を更新するか否か微妙なところである。

(注)国家電網公司のホームページによると、2012.06.28付発表で、工事が竣工し6月27日に試験運転を開始した。また、こう長は2,059kmに確定した。

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