がくうそうでんせん

架空送電線の話

The Overhead Power Transmission Line
タワーラインソリューション
produced by
Tower Line Solution Co.,Ltd.

500kV海峡横断送電線

In this item, the commentary about 500kV power transmission lines crossing the straits in our country is carried.

超大型構造物である500kV送電線にとって大変厳しい気象環境である海峡を越えてそれが建設されるのは希であり数少ないが、我が国では関門連絡線、本四連系線および苓北火力線の3ルートが建設されており、以下にその概要を掲載する。

まず初めに、世界で最も有名な長径間・海峡横断送電線は、イタリアの本土とシチリア島を隔てるメッシーナ海峡を横断する長径間送電線で、それは1956年(昭和31年)に建設され運転開始されている。
各径間長は、シチリア島から本土側に向かって、[引留鉄塔]-752m-[横断懸垂鉄塔]-3,653m-[横断懸垂鉄塔]-646m-[引留鉄塔]となっており、海峡を挟んで2基の懸垂高鉄塔(高さ224m)により径間長3,653mで横断しており、当時世界で最長径間長の記録を樹立した。
電圧は220KV設計当面150KV運転、当面4相架線で1回線運用し、将来2相を増架して2回線送電線とする計画であった。
しかし、シチリア島の需要が増加したため、その設備では送電容量不足となり、海底ケーブルに連系の座を譲り現在では歴史上のモニュメントとして横断高鉄塔2基を残し他の設備はすべて撤去されている。
右写真は、建設直後の写真で本土側からシチリア島を望んだものである。

なお、現在の世界一長径間・海峡横断送電線は、グリーンランド、ヌーク(Nuuk)近傍のアメレリック(Ameralik)フィヨルドを横断する送電線で、電圧132KV、1993年(平成5年)に建設されたもので、径間長5,376mである。
(当サイトの「架空送電線の分類・規模」の(世界記録)の項にて詳細解説・掲載)

さて、我が国に於ける海峡横断送電線は、日本発送電株式会社が太平洋戦争末期に敵航空機の攻撃に曝されながら空襲時にも工事中断することなく工事施工し、終戦の年の1945年(昭和20年)12月に運開させた関門海峡横断の110kV関門幹線が最初である。
右写真は、110kV関門幹線が関門海峡を横断している箇所の完成直後の写真で、下関上空から九州・門司側の横断鉄塔を撮影したものである。

その後、110kV関門幹線は1959年(昭和34年)に九州電力により220kV設備(新関門幹線)に建て替えられた。
さらに最近の電力需要の増加に対応し、かつ九州・中国地域の強固な連系系統を構築するため、この設備を500kV化することとし、電源開発では220kV新関門幹線ルートを流用し1980年(昭和55年)に500kV関門連絡線として運開させた。
また、電源開発では本州と四国を連系する500kV本四連系線を1994年(平成6年)に建設した。
そのうち瀬戸内海横断区間は瀬戸大橋にケーブル添架したが、岡山水道横断箇所は架空線で海峡横断させており、その海峡横断部分は送電線全体の運開前年の1993年(平成5年)に工事完了させている。

さらに同時期の1995年(平成7年)に、九州天草の下島に建設された苓北火力の出力を九州基幹系統に連系させるため九州電力は500kV苓北火力線を建設している。同送電線は、天草諸島の下島を起点として上島~維和島~戸馳島~宇土半島を結ぶルートで島伝いに九州本土に至っているが、島から島へ渡る際に本渡ノ瀬戸、大戸ノ瀬戸、藏々ノ瀬戸、モタレノ瀬戸の4つの海峡横断をしている。

以上3ルートが我が国に於ける500kV海峡横断送電線である。

なお、500kV未満の超高圧送電線(170kV以上)の海峡横断送電線は、下記に挙げるように瀬戸内海および九州西部などの島々の多い地区で専ら建設されている。

(220KV中四幹線については、我が国で最長径間長を記録しており、「歴史に残る送電線」の別項にて詳細解説・掲載)

さらに187kV未満の電圧では、中国電力により

その後同社で建設された主な海峡横断送電線としては、

一方、九州電力では、

このように110kV~66kVの海峡横断送電線が瀬戸内海および五島列島を含む九州西部などの島々の多い地区に於いて、主に島への電力供給線路として各所に建設されている。


本項では、我が国における最高運転電圧である500kV送電線の、世界的に見ても最大級の大型設備の海峡横断線路について、高度な設計・施工技術を開発・適用して建設した概要を掲載する。

海峡横断送電線としては、設計上では長径間となる海峡横断径間で電線弛度を如何にして少なくして両端鉄塔高さを低減させるか、電線張力設計と電線線種の選定が重要課題となる。また、工法上では、頻繁に海峡を往来する船舶に与える航行傷害を如何にして回避させるか、電線架線工法の選定が重要課題となる。
したがって、上記の2点すなわち「高鉄塔、特殊電線設計」および「電線架線工法」などに的を絞って解説する。

copyrights © Tower Line Solution Co.,Ltd.